慰謝料とは,交通事故によって被った精神的損害に対する賠償金のことをいいます。
交通事故においては,①入通院慰謝料,②後遺障害慰謝料,③死亡による慰謝料,④近親者の慰謝料等があげられます。
治療費等の実際に発生した損害の賠償と異なり,精神的な損害を金銭的に評価するのが慰謝料であり,実務上は一定の基準に従って金額が定められています。もっとも,慰謝料を増減額すべき事情がある場合は,個別具体的に慰謝料額の調整が行われることがあります。
交通事故においては,原則として物損は慰謝料請求の対象ではありません。なぜなら,物損は財産に対する損害であり,そもそも物損に対する精神的損害は発生しないと考えられるためです。
したがって,慰謝料請求が可能なのは原則として人身損害が発生している場合に限られます。
ただし,自宅やペット,墓地等が事故によって損壊された場合は,単に車両等が損壊された場合とは異なることから,慰謝料請求が認められる場合もあります。
(3)入通院慰謝料とは
入通院慰謝料とは,交通事故により被害者が病院等の医療機関へ入院や通院をせざるを得なかったことによって生じた精神的損害に対する慰謝料のことをいいます。
実務上は入院日数及び通院日数に応じて金額が定められており,また怪我の軽重によっても金額が異なります。
むち打ちで他覚的所見のない場合(レントゲンやMRIの画像上異常がない場合)には,通院日数に応じた慰謝料を3分の2程度に減額されることがあります。
(4)後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは,交通事故の被害者が通院を余儀なくされ,最終的に後遺障害が残ってしまった場合に,後遺障害が残ったことに対する慰謝料のことをいいます。
後遺障害慰謝料は,1級から14級までの自賠責損害調査事務所が認定する後遺障害等級に応じて金額が定められています。
(5)死亡による慰謝料・近親者の慰謝料とは
交通事故の被害者が死亡した場合,事故によって人生を突如終了させられたことに対して慰謝料請求をすることができ,この慰謝料請求権は直ちに相続人に相続されます。
また,相続人等の被害者の近親者にも近親者固有の慰謝料請求権が認められます。
(6)慰謝料の支払基準
慰謝料の支払基準は①自賠責保険基準,②保険会社基準,③裁判基準の3つの基準があります。①自賠責保険基準が最も金額が低く,③裁判基準が最も金額が高いです。
①自賠責保険基準での慰謝料請求は,所定の書類さえ提出すれば比較的迅速な支払を受けられるのがメリットですが,自賠責保険の趣旨が最低限の被害者の救済であるため,支払金額の上限が決まっているというデメリットがあります。
②保険会社基準とは,損保会社が独自に設けている基準であり,自賠責保険基準よりは高く,裁判所基準より低いのが特徴です。
保険会社はこの基準に基づいて示談金の提示を行うことが多いですが,弁護士を立てて交渉したり裁判を起こしたりすることによって,より高額な慰謝料を取得できる可能性が高いため,保険会社からの提案をそのまま受け入れて示談するべきかどうか,注意が必要です。
③裁判基準は,過去の裁判例等に基づいて,訴訟になった場合に裁判所が認定するとされている基準です。メリットとしては,弁護士にご依頼いただくことにより,裁判基準を前提とした示談交渉をすることが可能になり,より高額の慰謝料を取得することができます。
ただ,保険会社が訴訟提起前の交渉段階では裁判基準では支払わないと主張することがあり,その場合は裁判所に訴訟を提起した上で解決する他ありません。
したがって,解決ひいては賠償金の取得まで時間がかかる可能性があるというデメリットがあります。