交通事故によって怪我をした被害者に,後遺障害が残ってしまうことがあります。後遺障害が残ってしまうと,労働能力が低下し,事故前と同様に労働して収入を得ることが難しくなると考えられています。
逸失利益とは,交通事故による後遺障害がなければ得られていたことが予想される収入等の利益のことといいます。
逸失利益の算定方法は,①基礎収入に②労働能力の喪失割合を乗じ,これに③喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じて算定します。
ア まず,①基礎収入の算定方法は,休業損害と同様です。
イ 次に,②労働能力喪失割合は,認定された後遺障害等級によって定められています。たとえばむち打ちで14級と認定された場合は,5%となります。
ウ 最後に③労働能力喪失期間とそれに対応するライプニッツ係数について説明します。
まず,労働能力喪失期間の始期は症状固定日です。学生等未就労者の場合は就学終了予定時と考えます。
労働能力喪失期間の終期は原則として67歳までと考えますが,年長者の場合は,67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長い方とします。ただし,むち打ちの場合は2年から5年程度しか認められないのが現在の実務の考え方です。
逸失利益は示談成立時に一括で支払われるため,当事者間の公平を図るべく,今後発生すると予想される利息分を予め控除する必要があります。これを中間利息の控除といい,喪失期間に対応したライプニッツ係数を乗じることで,中間利息が控除されたものとして扱われます。