遺留分とは,被相続人と一定の関係にある相続人に最低限度の保障として,遺産について法律上必ず留保されなければならない一定の割合をいいます。
これは,被相続人は遺言によって自身の財産を自由に処分できるため,遺言によって家族の1人だけに財産を残したり,家族以外の第三者に全財産を相続させたりすることができる一方,被相続人の遺産を相続できることを期待していた相続人が生活に困ることがないよう,調整を図るために民法上認められた制度です。
遺留分は,民法により,兄弟姉妹を除く全ての法定相続人に認められています。
各遺留分権者に認められた遺留分の割合は次のとおりです。
①相続人が配偶者のみの場合 2分の1
②相続人が直系卑属(子・孫)のみの場合 2分の1
③相続人が配偶者と直系卑属の場合 2分の1
④相続人が直系尊属(父母・祖父母)のみの場合 3分の1
⑤相続人が配偶者と直系尊属の場合 2分の1
なお,該当する遺留分権者が複数いる場合には,上記遺産に対する遺留分の割合を更に法定相続分にしたがって分割することになります。
遺留分権者は,自身の遺留分を保全するために必要な限度で,被相続人が行った遺贈や贈与から遺産を自身に引き渡すよう請求でき,この遺留分権者の請求を遺留分減殺請求といいます。
遺留分減殺請求は,遺留分権者が①相続の開始と②減殺すべき贈与または遺贈があったときから1年以内に行わなければなりません。また,上記要件を満たさない場合でも,相続開始から10年を経過すると請求できなくなるため注意が必要です。
遺留分減殺請求は,遺留分権者が,被相続人の遺言や贈与によって遺産を取得した者に対して,当該遺贈等の減殺を請求する意思表示を行うことによって行います。先ほどお話ししたとおり,時効等の問題があるため内容証明郵便にて行うことが一般的ですが,必ずしも訴訟による必要はありません。
ただ,相手が任意に応じてくれることは少ないため,最終的には調停や訴訟で解決することが多いといえます。
遺留分の計算方法等は複雑な問題を含むため,お早めに弁護士に相談されることをお勧めします。